特集 連載 新島って、ロックだ‼︎
軽くて丈夫なコーガ石だからできるロックな家を見よ!
Posted on 2020年5月18日
屋根までコーガ!な百年建築
新島の家は、カッコいい。外壁や倉など家の一部が石造りの家はよくあるが、屋根まで石でできた家というのはあまり見たことがない。軽くてやわらかいコーガ石が生み出した、唯一無二のロックハウスだ。島内にはコーガ石造りの民家が残されており、新島でしか出会えない独特の景観美を生んでいる。
「新島も式根島もそうだけど、私たちは普通に住んでいるものだから、コーガ石というのは当たり前だと思ってたのよ。だから、こんなに珍しがられるのが不思議でしょうがなくてねえ」
新島・本村地区に暮らす小久保喜久枝さんは、笑いながらそう話す。100年以上前の大正時代に建てられた、コーガ石造りの家に今も夫婦で暮らしている。
「オーヤ」と呼ばれる母屋と、世代交代した先代が暮らすための別棟・隠居(いんきょ)が木骨コーガ石張りの家。外壁だけでなく屋根瓦まですべてコーガ石でできた、新島でも数少ない伝統建築だ。敷地内には石倉もあり、こちらはコーガ石だけで造られている。

新島で石の家が建てられるようになったのは、大正時代に入ったころから。それまでは茅葺きの家が主流だったが、なにしろ新島は風が強い。冬になると「西ん風(にしんかぜ)」と呼ばれる暴風が、数日に渡って吹き荒れる風の島なのだ。人々は風にあおられて起きる火事に悩まされ続け、特に明治末期には火災と水害が重なり、島の民家は甚大な被害を受けたという。
「うちも海に近い場所に家があったんだけど、3回火事が続いて、ここに移って家を建てたと聞いたのよ」と小久保さん。


そこで白羽の矢が当たったのがコーガ石だ。コーガ石はセメントと相性がよく、一度貼り合わせればバツグンの強度を発揮する。しかも断熱性が高いので夏涼しく、冬暖かい。内側の気泡がほどよく湿気を吸いとり、音や衝撃を抑えてくれる。厳しい自然から身を守るシェルターとしてだけでなく、快適に過ごせる機能を兼ね備えているのだからコーガ石おそるべし!である。
おまけに新島の人々は洒落ている。よく見ると屋根や軒下を飾る意匠、窓のひさし、引き戸、戸袋、空気孔、表札に至るまで、コーガ石を使って趣向を凝らした細工がほどこされているのだ。中には美しいドーム型トイレやデコラティブな装飾など凝ったデザインのものも。新島ではおよそ7割の民家が何らかの形でコーガ石を使っているという。どんな風にコーガ石が使われているのか、散歩しながら探してみるのも面白そうだ。



photo by 岸本咲子
design by 西山里佳
text by 秋枝ソーデー由美
*こちらはフリーペーパー『にいじまぐ』vol.1(2017年8月発行)の特集記事を転載したものです。記事の内容および写真は掲載当時のままとなっており、一部情報が古いものもあります。あらかじめご了承ください。