おもしろカルチャーに目がない、にいじまぐ編集長がいく!今回は東京諸島を離れ、世界遺産の島・奄美大島編です。
「奄美大島なんですけど、行きます?」
いつも大変大変大変お世話になっている七島信用組合のCさんから、そうお声がけいただいたのは、春のことです。
「七島信用組合の主催で、東京諸島の観光事業者を集めて視察ツアーを実施している」という噂は、少し前からちらほらと聞いていました。2年前は八丈島。去年は伊豆大島。現地の宿や観光施設を多数見学できるだけでなく、各島からの参加者&地元事業者で交流して島間ネットワークを広げられるという、大変大変大変すばらしい取り組み。
ある新島の人に「式根島に行ったことがない」と言われたときはエエエ??と衝撃を受けましたが、連絡船で10分ほどの島でそうなのだから他島も推して知るべし。それは新島に限らないようで、東京諸島とひとくくりにされますが島間の行き来は思った以上にないのが現状。航路の異なる北部(伊豆大島~神津島)と南部(三宅島~青ヶ島・小笠原)の島同士となると、なおさらです。
そんななか大変大変大変お世話になっている七信さん(しつこいですか)の旗振りで他島をじっくり見学できるなんて、貴重すぎるチャンスではありませんか。何よりいろんな島の人と旅できるなんて、最高すぎる企画じゃないですか。わかりやすい観光事業者ではないわが社ですが、なんとかねじこんでいただけないかとCさんに相談したところ、
「ちょうど欠員が出たんですよ。参加されます?」
「え、参加したいです!」
「参加費もかかりますけど」
「ど、どうにかします!」
「行先は奄美大島なんですけど」
「アアァマミィィ」
今回は七島信用組合70周年記念として、東京諸島を飛び出して奄美大島まで行ってしまおう!ということになったとのこと。鹿児島県の、奄美大島。世界自然遺産の、奄美大島。元ちとせの、奄美大島。大島紬の、奄美大島。黒糖焼酎の、奄美大島。大事なことなのでもう一度言います。黒糖焼酎の、奄美大島。
行かない理由がありません。
というわけで6月30日から7月2日の2泊3日の「観光事業者交流会in奄美大島」に参加してきました。今回はそのレポートをおとどけします。

今回の奄美行きは伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、小笠原・父島の各島から集まった事業者約30名と、七島信用組合の職員さんによる一大ツアー。各島から羽田空港に集結し、JALのジャンボで一路、奄美大島へと向かいます。
普段使っている調布飛行場と違い、何もかもでかくて広い羽田空港。ターミナル内で利用できる自動運転モビリティ、を使うこともなく、動く歩道を歩く、こともなく「イシャ―旅ナイチュウンカ?(あなた旅慣れているの?)」と呼びかけながら動く歩道を眺める面々。なぜ楽なものを使わない?と不思議に思った次の瞬間には姿がない。ないと思ったら、ベンチで寝てる。寝てると思ったら、音楽聴いてる。聴いてると思ったら寝てる。
都会人ならイライラしたり手持無沙汰になったりしそうな、ちょっとした手間や待ち時間の使い方が独特。それが、大人数の島人と一緒にいて最初に感じたことでした。

そんなこんなで2時間半。JALの素敵なサービスを堪能しているうちに、海の向こうに島が見えてきました。

うわあ大きいな、伊豆大島より全然大きいなあ、などと思っていたら、

鹿児島と沖縄のちょうど真ん中に位置する奄美群島、その中心地である奄美大島は面積約712.35kmで、佐渡島に次いで日本で2番目に大きい島。東京23区や琵琶湖とほぼ同じくらいで、新島が30個入るサイズ感です。
人口は約5万7000人で、新島の約25倍。年間来島者数は約49万7000人(大島支庁調べ)で、新島の約15倍。羽田や成田からの直行便もあるし、何より2021年には奄美大島を含めた4地域が天下の世界自然遺産に登録!
どこを切り取ってもスケールが違いすぎる奄美大島ですが、スケールが大きいからといって勝負にならないわけではないのです。小さい島には小さい島の良さがあるんだからねっ!と若干戦闘態勢で奄美の地に降り立ったわけなのですが、

しょっぱなから田中一村を出すなんてズルい~~~!!!!
1か所目の見学地、奄美パークに併設された田中一村記念美術館。奄美の自然を描いた画家、田中一村の作品を目の当たりにして、早くも完全降伏状態。


奄美パーク内で流れていた映像。奄美群島の与論島で行われる「十五夜踊り」は、頭に布を被せ扇子を回して踊る感じが新島の大踊に近いものを感じます。
1日いたいくらいの気持ちを断ち切って、宿の視察へ。

島の伝統、伝説を次の世代に残し伝え、奄美の自然と集落文化に触れる宿「伝泊」。昔ながらの島の建築を残しながら、特別な体験ができる宿は「新島にも欲しい!」と思えるコンセプト。

写真からは見えませんが、コテージタイプの室内は海側が全面ガラス張りで、海とのインフィニティ感がすごい。台風の通り道である奄美は、飛ばされる前提で屋根がトタンだと聞きましたが、頑丈なコンクリート造の建物が多いところは新島にも活かせることがありそう。

こちらは貸別荘ラッキーハウス。2階建ての一軒家です。

こちらもオーシャンがドフロント。冬には暴風が3か月近く続く新島では手に入らない絶景。正直うらやましい。どこかから「富士見ヶ丘あたりに宿建てられねえかな!」という叫び声が聞こえてきました。
バスガイドさんに島のあれこれを伺っているうちに、ホテル到着。夜はどうしようかなと思っていたら、ツアーに参加していた伊豆大島の知人、千葉努さんに声をかけられました。
「以前、東京諸島でも活動されていた飛鳥さんをご存じですか? 奄美に移住してコワーキングスペースを運営されているそうで、宿の近くらしいんですよ」
それは気になる!ということで、ご一緒させていただくことに。

ライフ&ワークスペース Living AMAMI
「みんなが集う島のリビング」をコンセプトに、コワーキングスペースや自習室として開放しているスペースです。こじんまりしたカフェのような空間で、白をベースとした爽やかな雰囲気は初めての方でも気軽に入れそう。
Living AMAMIを運営する合同会社KAZAMIの矢吹飛鳥さんは、もともとリトケイのスタッフとして新島にも来島されていたそう。コミュニティマネージャーの菅野審也さんとともに、千葉さん率いるTIAMが運営する伊豆大島のコワーキングスペースWELAGOを訪れたことが、今回のご縁につながりました。(千葉さん、おこぼれに預り本当にありがとうございます)
Living AMAMIでは月に何度かイベントを開催するほか、オンラインコミュニティの運営も手がけているとのこと。単なるワークスペースに留まらない「長期的なネットワークやつながり」を生み出すことを目的に、複業マッチングサービス「リトリモ」を立ち上げ、移住希望者と地元事業者のマッチングを行っているとのこと。
「これまでの仕事で培ってきたスキルを、島で活かせないことにモヤモヤしていたんです。でも、島に仕事がないわけじゃなくて、仕事をうまく切り出せていないだけなのでは?と思うようになって。それで、地元の会社に話を聞きに行って、リモートでできる仕事を見つけるところから手がけています。
奄美でも家問題があり、簡単に移住できないところもあるので、島の外にいる奄美に移住したい人、二拠点居住したい人と、人手が足りず困っている事業者さんをマッチングすることで、将来的な移住へつなげていけたらと思っています」
と矢吹さん。現在、登録者は520名ほどで、約半数が二拠点居住で奄美との関係をつくりたいと希望されているとのこと。私たち新島OIGIEは情報発信や移住・空き家支援を通じて関係人口のみなさんと縁をつないでいるところがありますが、仕事を通じた島との関係づくりは今後の参考にしていきたいところです。
ちなみに矢吹さん自身も二拠点で行き来していて、菅野さんもリモートで複業中。ダブル、トリプルの掛け持ちスタイルは、どこの島も変わりませんね。

翌朝は、名瀬の界隈をあさんぽ。新しいホテルと昔懐かしい繁華街が混在していて、かなりタイプの町並み。


視察2日目スタート。ウエストコートWA-TERRACEへ。



スタッフさんアテンドで館内設備を見学。人数に合わせて効果的にベッド数を増やせる仕組みや、オフシーズンの集客など、宿の運営に役立つヒントが多く、参加者から質問攻めにあっていました。
バスで移動して、中心地の名瀬から南部の宇検村へ。

自然たっぷりのリゾート感あふれるエリアにたたずむコテージ。黒糖焼酎「れんと」で知られる開運酒造が運営していて、渡り廊下でつながった敷地内に5棟が点在しています。

室内は吹き抜けの広々した空間で、外から想像していたよりずっと広く感じます。キッチン付きなので自炊もできますし、食堂が隣接しているので歩いて食べにいってもよし、部屋でゆっくり食べるのもよしと、自分で選べるのは嬉しいところ。なお、こちらは黒糖焼酎「れんと」で知られる開運酒造直営の宿でして、




細かいことですが、この開運酒造はじめ奄美ではどこへ行ってもスタッフさんが全力で手を振ってお見送りをしてくれるのが印象的でした。ささいなことですが、こういうささいなことが旅の空気をつくり、「奄美いいとこだったな、また行きたいな」と思わせるんだなと改めて感じます。
奄美はコンビニがあり、ミスドがあり、イオンがあり、24時間開いているスーパーがあり、夜7時にお店が閉まってしまう新島人としては「あ…店、開いてる…黒糖安い…酒いっぱいある……」と夜な夜なスーパーに通ってしまい、気づいたら大量の土産を買っている自分がいました。
そしてもうひとつ。奄美の出版物の多さ!
実はその日の朝、神津島の知人であるテラマチの中村圭くんから「すごい本屋見つけました!」と報告を受けており、スキマ時間にダッシュで出かけてきたのです。



奄美関連の本がこんなに……しかも古本だけじゃない、今年出版された本もある……。最新刊と、自費出版の古い詩集なんかが同列で並んでいて、この本屋最高すぎる。
ハアハアしながら眺めていると、クセが強そうな店主のおじさまが「ちょっとコンビニに行ってくるから。5分ぐらいで戻るよ」と言って出て行ってしまいました。
5分。戻らない。
10分。戻らない。
20分。戻らない。
ギリギリまでねばったのですが、結局おじさまは戻ってこず、ねらっていた本を買うことができませんでした。くやしいけれど、そんなフリースタイルも旅の醍醐味なので大丈夫です。
悲しみを抱いたまま今回のメインイベント、参加者と地元事業者さんによる懇親会へ。

今回の奄美大島視察は、離島の信用組合が七島と奄美、五島列島の福江島と全国で3つしかないというところから、奄美大島信用組合と七島信用組合の連携から生まれた企画だそう。両信用組合職員さんと地元事業者さん、我々参加者が一堂に会しての大パーティに、最初は名刺交換などしつつ静かに会食と会話を楽しんでいた面々ですが、



ちなみに、お隣の席に座っていたのは、奄美大島で長年フリーペーパー「マチイロマガジン」を発行されていたNPOまち色の惠枝美さんでした。奄美入りする前に下調べして「フリーペーパーつくっている方とお会いできないかな」とひそかに考えていたのですが、少し前に廃刊されたことを知り残念に思っておりました。まさかここでお会いできると思わず感激。
奄美ではドローンの撮影が多いことや、島では相撲が盛んでYouTubeで相撲中継をされていること、一人で取材・撮影する際の工夫など、いろいろなお話をうかがえて大収穫でした。

いやー。初日は3時まで飲んだという方々がいましたが、この日は2次会3次会と続き4時まで飲んだとか。さすが島人は飲み方がすごい……。
東京諸島でも島によってこんなにカラーが違うのね、ということを改めて感じつつ奄美を後にしたのでした。奄美だけでなく東京諸島のことも理解できる大変大変大変貴重な機会をくださった七島信用組合さんに感謝し、日常に戻りたいと思います。ご清聴ありがとうございました。









