新島トピックス

人間って面白い!英一蝶展に行ってきました

Posted on 2024年11月1日

異端の絵師・英一蝶の大回顧展レポートです

見た人は、みんな一蝶が好きになっちゃうよね!

そんな展覧会でした。

江戸の絵師・英一蝶の没後300年を記念した『英一蝶 -風流才子、浮世を写す―』。市井の人々を描いて絶大な人気を博しながら、幕府に目をつけられて流罪となり、新島経由で三宅島へ流されるという数奇な運命をたどった英一蝶。その生涯を作品とともにたどる、一大回顧展です。にいじまぐでも紹介しましたが、会場に行ってきました!

サントリー美術館の会場内は3部構成で、1部が若きクリエーターとして活躍した「多賀蝶湖時代」、2部が流刑となり12年間を島で過ごした「島一蝶時代」、そして3部が奇跡的に江戸へ戻り、名を英一蝶と改めて旺盛な創作生活を送った「英一蝶時代」。2フロアに渡る展示で、かなりの見ごたえでした。

狩野派という超エリート絵師集団の一員としてデビューした当時から、確かな画力と色彩感覚を発揮していた一蝶。親に内緒で家出して神社の鳥居に落書きしようとする子供、うまい一句が出てこず天を仰いでウンウンうなる俳句の会、客を引き留めようとウソ泣きをする遊女……。

「ここを切り取りますか!」とツッコミたくなる独特のユーモアセンスと人物描写に、いきなり心をわしづかみにされます。真剣なのに滑稽。ゲスでいて上品。修羅場なのにププと笑えてしまう軽やかさ、解説を見なくても場面がスッと入ってくるわかりやすさは高い技術と洞察力を兼ね備えた一蝶だからこそ。

それにしても生き方は破天荒なのに、やさぐれた感じがしないのは天性のものなのでしょうか。とにかく、描いている人物のキャラ立ちしていて漫画っぽい。

これは一蝶ったら……モテモテだったことでしょうね(ニヤ)

そして島民として気になるのは「島一蝶時代」の作品群です。会場内でも大きくスペースを割いていて、一蝶の最高傑作との呼び声も高い「布晒舞図」(ポスターになった絵ですね)をはじめ、島でこんなに描いていたのかと驚くほどの数と大きさがそろっています。新島からの出展もたくさんあり、島で描いた作品が高く評価されていることに、なんだか島民として誇らしくなりました。

作品のほかにも、一蝶が関わった伊豆諸島の展示コーナーが設けられ、伊豆大島から八丈島まで、各島での流人の歴史と一蝶とのかかわりが島ごとに紹介されていました。三宅島に行く途中で滞在した新島に一蝶作品が多く残されていることは聞いていましたが、利島や御蔵島など他の島にも一蝶作品があることを初めて知りました。

特に三宅島は一蝶が上陸した港から住んでいた場所など、マップで細かく紹介されていて、一蝶ファンなら聖地巡礼したくなる仕掛け。むむ、三宅島うらやまし!

最後の「英一蝶時代」では、江戸に戻った彼が晩年を迎え、得意の風刺画を封印して宗教画に挑んだ様が表現されています。金屏風に色彩豊かな大作も多く、見ごたえ十分。どんな大きな絵も細部まで丁寧に描きこまれていて、パーツの一つひとつに宿る物語に引き込まれます。

舞楽図・唐獅子図屏風。NYのメトロポリタン美術館から凱旋帰国

 

カラフル、そして細部の描き込みがすごい

 

人間って、おろかで、あざとくて、愛おしい。

英一蝶展は11月10日まで。まだの方は、ぜひサントリー美術館へ!

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text by ソーデー由美

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