島愛にあふれた驚異の中学生あらわる
ハミーとの鮮烈な出会い
2026年冬の、ある日のこと。当にいじまぐを運営する新島OIGIEに、知らない方からメールが届いたのです。送り主の名は「みやっか」。新島では島で一番高い宮塚山のことをそう呼ぶので、新島の住人だということはすぐわかりました。
「展覧会に参加したいのですが、どうすればよいでしょうか?」
OIGIEでは2月に誰でも参加OK!な展覧会を企画していたのですが、なにしろ小さな地域なので名前や屋号を聞けば参加者がどこの誰だか把握できます。ところが「みやっか」さんは、さっぱり見当がつきません。
ひとまず作品の持ち込み方などをひと通り返信すると、「わかりました。ありがとうございます!では次の水曜日にお持ちします」と丁寧な返事が返ってきました。そして約束の水曜日、やってきたのは青いユニフォームを着た少年がひとり。
「こんにちは!連絡した、みやっかです。展覧会の作品をお持ちしました」
それが小学6年生、ハミーくんとの出会いでした。
持ち込んできたのは、新島の天然石・コーガ石を新島の形に切り出した彫刻と、新島の風景写真をはめこんだ手づくりのストラップ。素朴ながら、モノづくりへの熱意と島への愛が感じられる作品です。
気になっていろいろと聞いてみると、彼は去年の春に新島へやってきた転校生とのこと。新島の山が好きで写真や動画を撮りためていたところ、展覧会のことを知り、自分の写真を使って何か制作できないかと考えたそう。落ち着いたやりとりから相手は大人だと思いこんでいたので、まさか小学生だったのか!とビックリでした。


2月中旬に開催した展覧会では、本人の希望もあって素性を伏せて「みやっか」として参加。あまり見かけない新島の風景に、来場者は興味津々の様子でしたが、そこにハミーがやってくると「君がコレつくったの?」と驚いた人も少なくありませんでした。
そんなハミーは会場でプロの画家と知り合い、「どんな作品をつくれば、たくさんの人に見てもらえるんでしょうか」と悩みを打ち明ける場面も。「他人が見たいものよりも、まずは自分自身が好きだ!ここを見てほしい!という作品をつくるといいよ」とアドバイスを受け真剣なまなざしでうなずく姿は、まさにクリエイター同士の会話でしかありませんでした。
これは・・・・面白い子が出てきたぞ!
新島発の中学生起業家、誕生
展覧会が終わり、私たちの拠点にハミーが作品を引き取りにやってきました。拠点の半分はクラフト商品や特産品が並ぶショップになっているのですが、作品を受け取った後も立ち去ることなく、店内を見回しながら何か話したそうにしています。「こういうグッズに興味があるの?」と声をかけると「はい。ストラップをお店に置いてもらうにはどうしたらいいんですか?」とハミー。
そこからハミーと私たちの交流が始まりました。お母さんが学校の先生で、転勤で新島にやって来たこと。新島の風景が好きで、その魅力を伝えたくて動画編集をがんばっていること。イベントで知り合った新島の動画クリエイターN Proさんを師匠と仰いでいること。そして「学校の活動には限界があって、自分の力で新島のよさをもっと広めたい」と真剣に考えていること。
「うちは小学生の作品を商品として取り扱うことはできないのね。お金や伝票のやりとりが必要だから。でも、本当にビジネスとしてがんばりたいということなら、開業して個人事業主になるというのはどう? 中学生起業家って世の中に結構いるから、調べてみたら面白いかもよ」
「開業ってどうしたらいいんですか?」
「開業届という書類を税務署に提出して、個人事業主になればOK。そしたらうちでも商品を取り扱いできるよ。小学校を卒業して、開業できたら一緒に仕事をしよう」
「わかりました」と言って店を後にしたハミーは1か月後、本当に開業して私たちの前に現れたのです。「開業の仕方も手続きも全部自分でやったようで、私たちもビックリしちゃって」と、一緒に来店されたご両親はハミーの行動力に驚きながらも、信頼して見守るつもりの様子。
ハミーが見せてくれた、受理したての開業届には「職業:小学生」と大きな文字で書かれてありました。
オリジナルグッズに込めた思いを聞いてみた
この春、新島中学校に進学したハミーは、1カ月かけてグッズを制作。商品としての品質の上げ方や原価計算、手に取ってもらうためのPR方法など、自分なりに工夫してデビュー作となる「新島フォトストラップ」を準備しました。
そしてGW中に、私たちの拠点であるOigie Shopにて販売することになりました。発売に先駆けて、ハミーの思いを伝えるべくインタビューを行いました。

――改めて、ハミーについて教えてください。
石井颯人、中学1年生です。みんなにはハミーと呼ばれています。生まれたのは千葉で、おばあちゃんの家が南房総にあったので、小さいときから海が好きでよく遊んでいました。
小5のときに、小学校の先生をしているお母さんが東京の島に転勤することになったんです。「どこの島がいい?選んでいいよ」と言われて調べてみたら、八丈島とかはデカすぎるなと思って。徒歩や自転車で移動しやすくて、海が近くて…と考えていったら新島がいいなって。新島の海が、おばあちゃんちの近くの海に似ている気がして、それも気に入った点です。それで2025年の春、6年生になったとき新島に来ました。
――実際に新島に来てみて、どうでしたか?
新島というと、羽伏浦とか有名なところしか取り上げられていないけど、実際に来てみたらいいところがたくさんあるなと思いました。最初の2か月間は海ばっかり行っていたんですけど、釣りをするようになってできた友だちに初めて山に連れていってもらって。そこからいろんな山を歩くようになりました。
特に大好きになったのが、宮塚山の上にあるテレビ塔の風景です。砂漠みたいに広がっている砂の感じとか、テレビ塔が連続して立っている景色が好きで、山に行っては写真を撮りまくっていましたね。
――もともと写真が好きだったの?
そういうわけじゃないんですけど、お気に入りの景色を残したくて写真を撮るようになって、師匠(N Pro)と出会ってから動画も撮るようになりました。でも、この時間のこのアングルで撮りたい!というイメージはあるんですけど、撮りに行けないことも多くて、正直まだまだ作品が足りないです。
師匠には「起承転結を考えるといいよ」と言われたので意識するようにはしていますが、うまくいかないこともあります。師匠の動画っぽくつくってみようとしても、ぜんぜん近づかない。師匠すげーなって思います。
――師匠とはどこで知り合ったの?
去年の10月に新島の羽伏浦キャンプ場でやっていた新島DIYという音楽イベントで、自分が所属しているサッカーチームが資金を集めるためにゲームのブースを出していたんですよ。そこで、N Proさんが詐欺師みたいにヘンなやり方で手伝っているのを見て、それから僕の師匠になりました。


――まさかの出会いすぎる(笑)。そこからグッズをつくろうと思ったのはなぜなんですか?
隣の式根島に行ったときに、「同じ新島村なのに式根島のほうが観光客多くないか?」と不思議に思ったのがきっかけでした。新島にもいいところがいっぱいあるのに、なぜだ?といろいろ調べてみたんですが、観光ガイドとかで紹介されている場所は有名どころばかりで、ほかの場所がぜんぜん宣伝されていないんだとわかってきました。
それで、学校の探究授業で新島の魅力をもっと知ってもらおう!という活動をするようになりました。イベントで発表をしたり、壁画を描いたりするのもいいんだけど、本気で新島の魅力を知ってもらいたいなら、外の人にもっとアピールして島に来てもらわないと意味がないのでは?という気持ちが湧いてきて。
でも、小学生の自分ができることって少ないなと限界を感じていたので、だったらグッズをつくるのはどうだろう?と考えたんです。神津島に行ったときに、お店にキーホルダーがたくさん並んでいて、こんなにいっぱいのなかから選べるなんてすごいな、新島と格差があるなと感じたことがあったので。
――なるほど、近隣の島々との比較や、島内での探究活動を経て起業を思い立ったんですね。
はい。それで一度自分でやってみようと思って、つくったのが展覧会の作品です。自分のお気に入りの風景写真をプリントしてフレームにはめこんで、レジンで固めてつくりました。これなら自分のこづかいで材料を買えて、時間があるときにコツコツつくれるし、観光ブックに載っていない景色を紹介できる。他の島との違いもわかって、お客さんが新島に来てくれるんじゃないかなと思ったんです。
買ってもらえないと意味がないので、起業して商品づくりを始めました。中学校に入って自由な時間が少なくなってしまったんですが、なんとか時間をやりくりして活動を続けたいと思っています。

インタビュー後、初めてグッズを納品するということで「百均で買ってきました!」と納品書の束を取り出したハミー。書き方を説明し、必要事項を記入していざ切り取ろうとしたところ、力加減がわからず端がビリビリに…。
「があ~~~~~~!終わったあ~~~~!」
頭を抱える起業家ハミーのチャレンジは始まったばかりなのでした。
▲せっかくなので記念に飾ってみた








