新島初の冷食自販機、その魅力と苦悩
自販機には、ロマンがあります。
暑い夏にはキンキンに冷たいドリンクを、凍える夜には心まで温まる飲み物を。自販機はいつだって私たちの味方であって、24時間いつでもそこにいてくれる絶対的安心感は、街灯が少ない田舎であればあるほど強くなるのです。
ましてや自販機は、ドリンクだけの時代ではありません。洋服や雑貨などの物販はもちろん、コロナ禍を機に食品を扱う自販機が全国的に急増。行列のできるラーメン店の人気メニューや高級レストランの本格フレンチだって並ばずに買えるし、肉に魚介にお寿司にケーキ、もはや自販機で買えないものはないのではという進化ぶりです。
小さな箱のなかに広がる、日常の中の非日常。ああ自販機には、ロマンしかありません。
そんなめくるめく自販機の世界に、果敢にも飛び込んだ人がいます。梅田久美さん。新島に生まれ育ち、新島を愛し、文化を愛し、コーガ石を愛し、愛しすぎてコーガ石の空き家を自力でリノベしてゲストハウスやシェアハウスとしてよみがえらせ、さらには「コーガ石の建物をもっと活用したい!」と不動産業まで始めてしまった、新島愛のかたまりみたいな方なのです。

そんな久美さんが、次に手がけたのが自販機です。本村のメインストリート沿いにある空き店舗を活用し、2025年11月に自販機ステーション「Mingo(ミンゴ)」をオープンしました。

ミンゴとは新島の言葉で「小さい」という意味。8畳ほどのこぢんまりしたスペースに、冷凍食品の自販機2台とドリンク自販機が並び、電子レンジも完備。24時間いつでもここでごはんが買えるようになっています。新島では初の冷食自販機ということで、オープン時には大きな話題となりました。
「もともと利益はあまり考えていません。島で困っている人を助けたい、島の人にとってちょっとした楽しみになればという思いで始めたので、維持費をまかなえたらいいなという気持ちです。でも、いざやってみると思った以上にむずかしい。このままだと続けていけないかもしれなくて……みなさんに助けてほしい!というのが本音です」
と久美さんが途方に暮れる理由とは?離島にあったら嬉しい冷食自販機、その魅力と困難について、にいじまぐが直撃インタビューしてみました!
Contents
島の「あったらいいな」を叶える冷食自販機
内地に比べて物流が少なく、いつでもなんでも食べられるわけではないのが離島の生活。ないならないなりに楽しめるけれど、あればなお楽しいというのが本音です。冷凍技術の発達で、最近の冷凍食品は本当においしい。島なら冷食の魅力が最大限に活かせるのではないか、と久美さんは考えました。
「新島は夜7時すぎると商店が閉まってしまうし、飲食店も限られているので、宿のお客さんが食事に困っているのを見て何か手はないかなと思っていたんです。最終手段として冷食が手に入ればいいかなということと、夜中にちょっと食べたい、甘いものがほしいという需要にも応えられたらと。そこで、数年前から空き家になっていた元かき氷屋さんの店舗に、冷食自販機を置くことを思いつきました」
いくつかのサービスを検討し、最終的に導入を決めたのが無人小売システム「スマリテ」でした。この自販機がすごいのが、セルフレジでのバーコード読み込みや、キャッシュレス決済での金額入力といった面倒な手間が一切ないこと。スマホにアプリを入れておけば、あとは自販機で「QRを読み込んで扉を開ける→ほしい商品を取る→扉を閉める」だけで決済完了という超絶ストレスフリーなシステムです。
さらに嬉しいのが、販売する商品に縛りがなく、オーナーが自由に決められるということ。ニーズに合わせて商品をカスタマイズできるので、例えば観光シーズンは旅行者向け、オフシーズンは住民向けというように細かくラインナップを変えられます。「時期によってニーズが激しく変わる新島に合ったシステムだと思います」と久美さん。
オープンからわずか2か月で…
ただし、その先には「離島の宿命」が待っていました。ひとつは、送料の壁。もうひとつは、ニーズの移ろいやすさです。
「仕入れサイトがいくつかあるんですが、冷食は送料が高いうえに島だと余計に送料がかかるので、選択肢がかなり狭まることがわかりました。そのなかでこれはいいかな?というものを選んで仕入れて、売れなかったものは別の商品に変えて…という思考錯誤の真っ最中。軽食が売れるかと思ったらそうでもなかったり、調理しないと食べられないものが一番人気だったりと、商品選びがむずかしいなと感じています。
それに、新島の人って飽きるのが本当に早い(笑)。すごく出たので追加で入荷したら翌月にはパッタリ…ということも多いんですよね。食品なのでストックにも限界があり、賞味期限切れでロスが出たこともあります。何を仕入れたら正解なのか、本当にわからなくなっています」
11月22日にオープンしたMingoは、11月は10日ほどの稼働で17万円の売上を記録し、滑り出しは上々だったそう。翌12月には20万円を売り上げ「これならやっていけるかも」と思ったそうですが、そこからは一転して減少の一途をたどり「2026年4月時点で売上は月6万円程度。5月は中旬の時点で2万円くらいしかないので、もっと減るかも」と肩を落とす久美さん。
「仕入れのお金はもちろん、電気代や通信費などの維持費がかかるので、正直なことを言えば機械代を除いても月10万円の売上でトントン。これから夏に向けてエアコンの電気代がかさむこともありますし、できれば機械代も回収したいので月15万円はほしいところです」
冷食自販機、コレが人気!
悩める久美さんに、実際どんな商品が売れているのか聞いてみました。久美さんの解説つきでご紹介します。
二郎系ラーメン

「家で調理が必要なものはいらないかなと思っていたのですが、二郎系は絶対入れたほうがいいと息子に勧められて仕入れたところ、結果的にこれが一番人気になりました。食事としてというより、2つ3つ買ってお鍋などに入れる人が多いと聞いています」
富士宮やきそば

「軽食系は好まれるかなと思って、狙いがあたった商品のひとつ。コンスタントに出ています。富士宮焼きそばは太麺でもちもちしていて、おいしいし食べ応えがありますね」

「軽食系として焼きそば、たこ焼き、チャーハン、ホットドックの4種類を仕入れたんですが、焼きそばとたこ焼きは不動の人気ですね。冷食のたこ焼きは、船のスナックコーナーに昔からあったのでなじみがあるし、冷凍でもおいしいことは島の人ならみんな知ってますよね」
カップケーキ

「スイーツ系はわりと人気です。カップケーキ、クロワッサンたい焼き、クリーム大福などが特によく出ます。チョコバナナも人気が出てきましたね。カップケーキはちょっとしたプレゼントに利用される方が多いみたいですが、重量が軽すぎてエラーが出やすいこともあり、撤収しました。別のケーキがないか探しているところです」
クリーム大福

「クリーム大福自体は人気だったんですが、調子に乗って2種類に増やしたら二手に分かれてしまって、最終的に期限切れの憂き目にあいました…。今は取り扱っていないのですが、復活させようか思案中です」
読みが外れた…!失敗ラインナップ

「大誤算だったのが、バケットやサンドなどのパン系の不人気。焼いて食べたり、はさんで食べるかなと思ったんですが、まったく出なかったですね。これからキャンパーが増えてくればニーズが出てくるのか…やめるかどうか考え中です」
シーズン限定メニュー

「季節ものとして喜ばれるかなと思って、クリスマス時期に急にほしくなる人がいるのでは?とホールケーキとかターキーレッグを入れてみたんですが、ほとんど出ませんでした(笑)」
チーズピザ

「ピザを置きたいと思って、一番の売れ筋だったチーズピザを仕入れました。味はバツグンにいい!ただ、チーズ以外なにも具材が載っていないので、見た目が地味なせいなのか、あまり出ないんですよね。本当においしんですけどね、このピザ…」
ということで食べてみた!
日常をちょっと楽しくしてくれる夢のマシン、冷食自販機。とはいえ、なじみのないメニューをいきなり購入するのは不安…という方もいるはず。そこで、にいじまぐ編集部で試してみました!
そのままでもうまいし鍋は2倍うまい二郎系
まずは一番人気の二郎系ラーメンを試食してみました。袋のなかには麺とチャーシュー、スープが入っていて、湯せんなどで温めてセットするスタイル。

麺はかなり本格的!もちもちと主張してくる感じで、歯ごたえ強め。スープは二郎系らしいガツンと系で、ラーメンとして普通においしい。

せっかくなので、ファンが多いという鍋アレンジもやってみました。ラーメンスープをベースに鶏だし、塩などで整え、付属のチャーシュー、鶏肉、油揚げ、白菜、にんじんなどの野菜と一緒に麺を煮込みました。鍋に入れても負けない麺!なによりスープがうますぎる!

最後はごはんと卵、チーズを投入して、締めのおじや。これはもう、悪魔的なうまさ。危険。
あまくてやわらかいサンドパンはアレンジ自在
続いて「おいしいけど、なぜか売れない」サンド用パンを試食。四角いパンが3つ入っていて、手でさくっと半分に割って使うスタイル。パン自体はかなりやわらかめ。

ふわふわ。小さなお子さんでもいけそう。

ビーフハンバーグとチーズ、レタスをはさんでバーガーにしてみました。ポテトとドリンクをセットにしたら、ちょっとしたカフェメニューですね。
あまめのパンだからか、軽く焼くつもりが焦げてしまいました…。焼くのは低温でちょっとでよさそうですが、ナイフなどがいらないので使いやすさはバツグン。優しい味と食感なので、食事としてはもちろん、スイーツ系でも使えそうです。キャンプはもちろん、家に常備しておけばいろいろアレンジできそう!
チーズを味わうピザ!はちみつもおすすめ
最後に「味は最高だけどビジュが地味」なチーズピザを試してみました。

確かにあっさりした色味ではありますが、具材でごまかさずに味で勝負している感じがしますね。こういうシンプルなピザは、シンプルにはちみつが相性よさそうということで

うん正解。チーズの塩味と、はちみつの甘みが絶妙なマッチング!おやつでもいいし、お酒にも合います。ちなみに説明書には「トースターで4~5分、レンジで2分」ほどと書いてありますが、実際にはもっと短時間でいけます。ホームパーティ多めの人には手軽でおすすめです!

ウインナー、ピーマンの上にチェダーチーズ。クリーミーなチーズと、具材の食べごたえ、追いチェダーの濃厚さを楽しめます。
皆さんに問う!なにが食べたい?
これから夏の観光シーズンを迎える新島。旅行者向けのメニューを増やしつつ、住民にとっても楽しめるメニューであってほしい。今後のラインナップが気になるところです。
「メニュー以外で誤算だったのが、そもそもアプリを入れられないとか、使い方がわからずに挫折してしまう方が多かったこと。アプリさえ入れてしまえば本当にカンタンに使えるので、今後イベントやinstagramなどでセッティングのしかたについて周知を進めたいと思っています。
メニューについては皆さんの意見をぜひ教えてほしいです!自販機は冷凍、冷蔵で切り替えができるので、今後は1台を冷蔵にしてもよいかなという気持ちもあります。例えばアカイカの漬けなど、地物の魚も置けたらいいなと思いますし、島の加工品を買えれば旅行者のおみやげにもできますよね。
我こそは!という方がいれば、チャレンジコーナーとして参加してもらうのも面白いかなと思います。重さが揃っていれば、ある程度大きなサイズを扱えますし、数も2個程度でもOKです。ご参加をお待ちしています!」
注目の自販機に、あなたの意見が反映されるかも?くわしくはMingo instagramへ。








