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式根島でエコツアーガイド育成講習会開催

Posted on 2020年3月16日

新島、式根島の新たな魅力を紹介するガイド人材を育成

 

去る2020年1月10日~12日の3日間、日本エコツーリズム協会主催の「エコツーリズムガイド講習会 in 式根島」が開催されました。公益財団法人東京観光財団の多摩・島しょ地域旅行商品販売促進事業の一環として企画されたもので、尾瀬、知床、屋久島という全国屈指の人気観光地でエコツアーを手がける3人のプロガイドを講師に招き、エコツーリズムの基礎知識からガイドの解説テクニック、ツアープランの作り方まで、エコガイドのノウハウをみっちり学べる充実した内容。しかも参加費無料とあって、新島・式根島から多くの参加者が集まりました。

風光明媚な自然と海中温泉で人気の式根島、ダイナミックな景観とマリンレジャーで知られる新島。2つの島はいずれも富士箱根伊豆国立公園に属し、ここでしか出会えない豊かな自然があります。しかし両島にはネイチャーガイドやエコガイドはいないため、島の新たな魅力を紹介するエコツアーの誕生が期待されています。そこで、にいじまぐ編集部オザワが講習会を突撃取材! 講習会の模様をレポートします。

実地演習もありの充実した3日間

今回の講習会は式根島を舞台に、3名の講師を招いて行われました。3日間のタイムテーブルは濃密で、初日はエコツーリズム論、ガイド技術、環境保全の考え方と仕組み、エコツーリズムに関わる法律など、エコツーリズムについてみっちり講義。2日目は式根島でのフィールドワークも行いながら自然解説の組み立てやガイド方法、プログラムの企画立案など、エコツアーガイドの実践的な技術を身につけられるカリキュラムです。

メンバーは新島から8名、式根島から6名、神津島から1名参加したほか、講習のためにわざわざ静岡と沼津から来島したという2名を含めた総勢17名。新島、式根島からは観光事業に関わっている方が目立ち、仕事に直結するだけに真剣そのもの。島外から参加された方は島しょ地区の実態を知りたい、人脈を広げたい、今後のために勉強したい、など理由はさまざまでした。

式根島内を講師とともに歩き、エコツアーの可能性について模索する参加者

 

講義ではエコツーリズムの基礎知識から具体的なツアー企画立案ノウハウなど実践的な手法までみっちり学んだ

 

島のエコガイドの可能性

東京から気軽に行ける離島として、毎年多くの旅行者が新島、式根島を訪れますが、エコツアーはもちろん観光ガイドツアーも存在していないのが現状です。けれど現役ガイドとして活躍している講師の方々は「新島には観光ガイドツアーが活発な他の観光地に負けないくらい、自然や歴史の資産がある」といいます。

参加者の方に感想をうかがっても「新島、式根島でガイドの可能性を強く感じた」という声を多く聞くことができました。「観光客はきれいな景観を見て感動してくれますが、その背景や歴史を知ることができたら、もっと新島を好きになってくれるのではないでしょうか。すぐには無理かもしれませんが、新島でも多くのガイドツアーを展開できるようにしたい」と参加者のひとりである新島観光協会の高橋事務局長も語っています。

去年の台風被害、そして今回の新型コロナウイルスの影響で、沈み気味だった新島・式根島の観光産業ですが、特に式根島と新島と連携した観光ツアーガイドは新島村でしかできない価値があるのではないかと感じています。今ある自然を守りながら、観光地としての価値を高めるエコツアーとガイドの誕生が期待されます。にいじまぐでも今後も取材をつづけていきたいと思います!

 

*** 参加者のコメント ***

参加者から感想をいただきましたので、一部抜粋してご紹介します。

•式根島在住(女性)

式根島に移住して10年以上が経過した私にガイドができるかなと可能性を探るためと、現在の式根島のガイドの課題を講習から学べるかもしれないと思い参加しました。そもそものガイドの在り方や考え方すら知らなかった無知な自分と向き合う作業からのスタートでしたが、島の生活の中で培われた知識や、実体験から繋がっていた感覚がガイドのヒントになる事を知りました。

私ひとりの力ではまだガイドは成り立たない現実も感じましたが、新島・式根島にいるそれぞれ得意分野を持つ方たちの情報や知恵を出し合えば、素晴らしいチカラになる可能性を感じました。新島・式根島は現在ガイドツアーに関する具体的なガイドラインが無い地域ですが、ガイドラインを無理に作ることはせず、理解と共感できる人を繋いでいく地道な作業から取り組んでいきたい。島の魅力を発信できるよう、これからも島の事を勉強していきたいです。

・式根島在住(高校生の息子と親子で参加)

今、式根島の観光や仕事が頭打ちの現状で、島に帰って来たいと言う息子を受け入れたいけれども、現実的には経済的に厳しいのが現状。式根島の自然、資源を生かして自分で仕事を立ち上げなければ、観光ガイドや船での島観光、釣りガイド等の需要はあるもののなかなかなり手がいないので、親子で将来の事を考える良い機会になりました。

ガイド力や、料金設定など身につける事など課題はたくさんありますが、新島と式根島で1つのネットワークを作り団結!して行く必要性を感じました。新島、式根島それぞれにがんばることでの相乗効果、若い力とフットワーク! 島をよく知る地元の先輩方の力を1つにして、島を盛り上げて行けたら良いのにと思います。

・新島在住(女性)

新島に来て間もないなか、新島のことをいろいろ知りたい! そして、いずれ何かおもしろいツアーができないかなと考えていたので、今回の講習会は私にはドンピシャのタイミングでした。参加して、思ってい以上の講習内容ですごく勉強になりました。何より、新島についてたくさん知識を持った人、思いを持った人と出会えたことが何よりも嬉しかったです。

まずは、新島を知ること。新島を楽しむこと。そして、新島の楽しみ方のプロになること。見方をかえて、新島を観察すること。仲間を作って、私なりに新島を盛り上げて行きたいです。

・沼津在住(男性)

現在、初島には自然や文化・歴史についてのガイドサービスがありません。海は陸と繋がった環境にあり、自然も、もちろん文化や歴史についても陸と連動しているはずです。初島ならではの海をより楽しく価値高いものにするために、陸のことを知って発信したり、海でのガイドに応用したり、陸上のガイドサービスも新たに行っていきたいという考えがあります。今回は島しょ地域の方々が集まる講習会ということで、島ならではの情報収集、意見交換、人脈づくりも期待し、参加させていただきました。

講習会は、これから島で自然ガイドをしていく人向けの内容だったと思いますが、まさに的を得ていた内容で、本当にためになりました。これから応用・事業化に向けて、具体的に動いていけそうです。その流れの中で我々が得た情報は参加者の皆様にも有益なものになるかもしれませんし、皆様の情報が我々にとっての有益なものになると思いますので、今後皆様と情報交換などができればと思っております。東京都と静岡県という行政区分で考えると別かもしれませんが、対象にしている客層や商圏はほぼ同じですから、今後も同じ括りで東京諸島の1つとして考えていただけたらと思います。

・新島在住(男性)

情報共有だけでなく楽しい仲間づくりをしたいと思い、参加しました。「にいじま」を「たのしく+よくする」→新しい「にいじまスタイル」をつくろうと思っています。

 

・高橋徹・新島観光協会事務局長

30年近く働いていたIT系の企業を辞め、昨年に新島に移住してきました。昨年暮れから新島観光協会に勤め始めましたが、最初の出張がこのガイド講習会でした。観光に関する事だからという理由で、あまり目的意識も無く参加してしまったのですが、いざ受講してみると非常に充実した内容の講習会でした。

一番印象に残っているのは、実際にガイドもやられている講師の先生がおっしゃった「新島にはガイドが盛んな他の観光地に負けないくらいの自然や歴史の資産がある。」です。新島には、一般観光客向けのガイドツアーは全く無い状況です。観光客はきれいな景観を見て感動してくれますが、その背景や歴史を知ることができたら、もっと新島の事を好きになってくれるのではないでしょうか。すぐには無理かもしれませんが、新島でも多くのガイドツアーを展開できるようにしたいと思っています。

 

取材・文/ 小澤里江

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