新島トピックス

台風15号からのサバイバル! 

  • 編集部より

Posted on 2019年9月15日

2019年9月14日現在の新島はこうなってます *9/19追加情報あり

2019年9月8日夜から9日未明にかけて新島を襲った台風15号は、私たちの想定をはるかに超える暴風とともに島内を荒らし回り、大きな爪痕を残して去っていきました。新島移住4年目の編集スタッフが、これまでの経緯と現在の状況についてレポートします。

新島は冬になると、風速20m級の強風がひんぱんに吹く風の島。台風もしょっちゅうやってくるので、強風には慣れっこな地域です。9月8日は台風接近で船はすべて欠航。来島していた観光客の大半も前日のうちに離島してしまったので、「来るんだか来ないんだかノロノロした挙句に来なかった台風10号より、さっと来てさっと帰りそうだな」なんて話しながら、どの店も早めに営業を終え、十分に養生をして台風に備えたのでした。

 

緊張が走ったのは、夜9時頃のこと。新島の南にある神津島の知人から「そこらじゅう雨漏りして怖い。避難所に移動する」とメッセージが入ったとき、急に「ハチが低い場所に巣を作る年は大きな台風が来る」という友人の言葉がよみがって不安が一気に押し寄せました。

この後さらに強い風が吹いて50m超に

 

それを見計らったかのように、その頃から雨戸の向こうからビョービョーと聞いたことのない異様な風の音が聞こえるように。玄関の扉をわずかに開いて外をのぞくと、魚が腐ったような生臭いにおい。台風独特の熱い風雨が、家の壁に突き刺さるように吹いていました。家全体がグラグラと揺れ、電気もついたり消えたり。いよいよ停電になり、暗闇の中でドスン、バチンと何かがぶつかる音を聞きながら嵐が去るのを待つばかりでした。

 

やがて夜11時頃になると、嘘のように風がピタリと止みました。おや、ようやく終わったかな、と安堵したのもつかの間。じつは台風の目の中に入っただけで、真夜中すぎから今度はもっと激しい吹き返しの暴風が…。

 

不安な一夜を過ごして、迎えた朝。5時頃、外に出てみると景色は一変していました。道路にはトタンや瓦や原型をとどめない不穏な飛散物が散乱し、巨木が根本から持ち上げられて行く手を阻んでいました。切れてダラリとたれ下がった電線、傾いた電柱、割れたガラス、崩れた石塀。屋根ごと持っていかれた家もあちこちに見えました。

倒木に囲まれた瀕死のマイカー。まわりは湖と化し、木々は重すぎて、助けが来るまでなすすべもなく。

 

本当に大変な時に人って驚かないものなんですね。というより、驚く暇がなかったと言ったほうがいいかもしれません。集落のあちらこちらから人が現れて、お互いに声をかけながら片付けを始めたからです。トラックがある人は車を出し、力のある人は木を切って運び、他の人は掃除道具を持ち寄って小さなゴミを集める。最初から仕上がっているチームみたいな連携プレーに驚きつつ、言われるがままに片付けの輪に参加。

 

汗だくで作業しているうちに、昼を迎える頃には周囲はさっぱり片付いていました。おそらく島内各所で同じようなことが起きたのでしょう、9日のうちにはあらかたの散乱物が撤去され、個人の力ではどうにもできない巨木や電柱などは行政が順次撤去。地続きの近隣に応援を呼べない離島で、被災しなかった家はいないというほどの被害があったにも関わらず、これほどスピーディに復旧作業が進んだことに驚愕しました。

 

暑さがぶり返す中での停電と断水にはさんざん苦しめられましたが、それも13日には解消され、シルバーウィークの3連休までには一部を除いて全面的に復旧することができたのでした。

というわけで、9月14日(土)現在の新島の様子をお伝えします。

台風一過後は倒木、家屋倒壊、飛散物、停電、断水などに悩まされ、公共施設やお店、宿もほぼ閉鎖していました。現在ライフラインは復旧していますが、固定電話は一部不通になっており、携帯電話も場所や時間帯によってつながりにくくなっているようです。飲食店、商店もおおむね通常営業しており、食材や日用品も普通に手に入ります。東京―新島間の船はいずれも通常運航。調布―新島間の飛行機も支障なく就航しています。

 

新島一の映えスポットとして人気の羽伏浦のメインゲート。特に損傷はなく、今日も女子たちが撮影にはげんでいました。

 

かし、そばには根元から折られた看板が…

 

宿泊施設については、観光協会が9月12日に行った調査によると14軒が営業を再開。島内の一部で電話が不通になっている影響で、電話が通じず未確認の宿もあるそうなので、実際はもっと多くの宿が営業しているのではという話。

 

和田浜方面から見た前浜。黒根、まましたなど、海水浴場はどこも変わりなく穏やか。

 

メインストリートもいつも通りの景色に戻りました。

 

公共施設は勤労福祉会館(きんぷく)は営業再開していますが、湯の浜露天温泉、まました温泉、新島ガラスアートセンターおよびミュージアムは現在も閉鎖中です。宮塚山など展望台への道は一部通行止になっています。羽伏浦キャンプ場は受け入れを再開しました。

湯の浜露天温泉は現在も閉鎖中

 

「とうとう本物のパルテノンになった」と島民談

 

電柱の倒壊や倒木で停電が長引いた若郷も、今ではいつもの景色に

 

若郷・渡浮根港はめくれ上がった鉄骨屋根の撤去作業が進んでいました。いかに風の威力が強かったかが伝わります。

 

ちなみに私は11日から3日間、仕事で島を離れていたのですが、帰島した時には島内各所のガレキが跡形もなくきれいに片付けられていました。一見すると、何もなかったんじゃないかと勘違いしてしまうほどです。こんな時でも島に来てくれるお客さんを、できるだけおもてなししたい。そんな島の人たちの気迫がひしひしと伝わってきます。

もちろん島内で深刻な被害を受けた建物はたくさんあり、職人と資材不足で修繕が追いつかない状態です。倒壊寸前の危険な建物をどうするのかなど、解決まではまだまだ時間がかかります。それでも、センセーショナルな場面だけにフォーカスしていると、あたかも新島全域が壊滅的な状態であるように誤解してしまいます。

島人同士で助け合う「モヤイ」の文化や「ないものは作ればいい」DIY精神、サバイバル能力の高さで守った新島らしい穏やかな景色が、戻ってきています。爽やかな気候が続くこれからの季節、ぜひ味わいに来ていただければと思います。

(にいじまぐ編集部:秋枝ソーデー由美)

*9月17日追記

・湯の浜露天温泉は一部営業を再開しました。コインシャワーは利用できません。

・式根島は地鉈温泉が利用できるようになりました。電灯が復旧していないため、夜間の利用はご注意ください。

・宿泊施設については、一部をのぞいておおむね営業を再開しているようです。

・新島・若郷地区で不通になっていた光回線が復旧した模様です。本村の一部はいまだ不通となっています。

・ふるさとチョイスにて新島村の台風15号災害支援・寄附(ふるさと納税)が始まりました。ふるさと納税を行なっていない新島村に代わり、他地域が代理で手続きを行う制度とのこと。

*9/19追記

・台風以降閉鎖になっていた新島ガラスアートセンターは、ギャラリーなど一部立入禁止の場所はあるものの、19日より営業を再開しました。ガラスづくりの体験教室は22日(日)より再開予定とのこと。

 

*台風15号関連のニュースまとめ

台風15号被害は伊豆大島、新島、式根島にも 「ボランティアに行きたい」各島の対応は

「新島」も大きな被害、台風15号

*台風15号の復旧状況に関する最新情報→新島村サイトの「お知らせ」

*観光、宿泊関連の最新情報→新島観光協会

*船の運航情報→東海汽船

*飛行機の運航情報→新中央航空

 

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