光るキノコといえば八丈島…だけじゃないんです
だんだんと気温も上がり、そろそろ梅雨に入ろうかという季節。新島の梅雨は東京都内より数日早く訪れ、数日早く開ける。
この時期、一部の島びとが楽しみにしているのが、光るキノコ・シイノトモシビタケだ。
椎の朽ち木に発生するシイノトモシビタケは、1950年に同じ伊豆諸島の八丈島で発見された。永らく八丈島の固有種と思われてきたようだが、その後、沖縄・九州・四国・本州でも見つかり、関東では千葉県でも確認されているそう。伊豆諸島でもほとんどの島で見られるようで、新島では2004年あたりから存在が確認されるようになった。宮塚山や新島村博物館周辺での発生が知られているが、新島は全体的に椎の木に覆われているので、よく探せば他の場所でも見つかる可能性は高い。
光るキノコは国内で数種類が発見されていて、八丈島や小笠原諸島で「グリーンペペ」の愛称で親しまれている「ヤコウタケ」は強い光を放つ。一方、新島で見られるシイノトモシビタケはそれほど群生しておらず、ところどころに数本ずつ見つかる程度。しかも、ほんのりとした黄緑色の蛍光が特徴で、そばにちょっとでも光があればたちまちわからなくなってしまうほどの弱い光だ。
雨の後に発生することが多いのだが、すぐに萎びたりナメクジに食べられてしまうため、時期であっても見られるかどうかは運任せ。どうしてもシイノトモシビタケを見たいのなら、真っ暗闇の森にわけ入って、小さな光を探すしかない。
新島はそちら系の不思議な話も多いので、島びととしてはここがちょっとハードルが高い。ちょっとというか、私的には結構高い。キノコ見たさにひとりで発生場所の脇道まで行くものの、雰囲気に気圧されてまず踏み込めない。そのうえ森の中は蚊が多く、マダニもいたり、自然薯を掘り出した穴がぽっこり開いていたりもするので、見に行くようであれば島の慣れた方に同行してもらったほうがいい。虫除けや長袖長ズボンも必要だ。
ちなみに、シイノトモシビタケはホタルと同じくルシフェリンという物質にルシフェラーゼという酵素が反応して発光するそうで、光る生き物のほとんどがこの方法で光るらしい。新島で発光するものといえば、他に夜光虫もいる。これも今から夏にかけての時期に見られるもので、真っ暗な海辺の波打ち際や桟橋の縁などが青く光る。
夜光虫は東京湾にも多く、運が良ければ島へ向かう大型船が東京湾を航行する際にもデッキから見ることができる。これから夏にかけて夜の東京湾で船に乗る時には、船の引き波に目を凝らしてみてほしい。
文・写真/しまの汐(うしお)
新島出身・新島在住の自然オタク。