ビヤホールライオン 銀座七丁目店

Posted on 2018年4月24日

歴史と風格を感じるビヤホールの
“らしさ”の影にはコーガ石があった

都内のコーガ建築の代表的なものが、現存するビヤホールで日本最古と謳われる「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」だ。広い店内の天井全体にコーガ石が張りめぐらされ、華やかさの中に大人の落ち着きを感じさせる。建設は昭和9年。第二次世界大戦では辛うじて戦禍を免れ、84年たった今も当時のままの姿が残る。

なぜこの店の天井にコーガ石が用いられたのか? それはコーガ石のもつ優れた「吸音効果」にあった。ビールを片手に宴を楽しむビヤホールでは、上々気分になった大勢の客たちの声量はかなりのもの。その音を、コンクリートの十数倍もの吸音率があるとされるコーガ石がいい具合に吸収してくれるのだ。確かにワイワイとにぎやかな店内にいても、テーブルでの会話はナチュラルに聞こえるのが素晴らしい。

面白いのは、創業当時は白かったコーガ石が、重厚感あふれる黒色に変化していること。理由はわからないそうだが、一説には戦時中に米軍が焚き火をしたからというエピソードもあるとか。歴史に思いをはせながら、コーガ石をつまみに乾杯したい気分だ。

天井に伸びる太い柱には、ビールの原料である大麦を表現したコーガ石の装飾がほどこされている

 

 

昭和ロマンの雰囲気が漂う、創建84年のビヤホール。伝統の「一度注ぎ」で注がれた生ビールは雑味がなくすっきりとした味わいに。

 

text / 清永愛
photo / 岸本咲子
※『にいじまぐ』vol.1より転載