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新島をディープに味わうBook&Movie

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Posted on 2020年1月13日

ビーチリゾートとは別の顔。あなたの知らない新島がここに。

夏のにぎわいが嘘のように、静かな時間が流れる冬の新島。名物の強烈なニシン風(偏西風)が毎週のように吹き荒れるこの季節は、暖かな部屋でマグカップ片手に映画や本を楽しむには最高のシーズンだ。今回はそんな冬の新島から、島の魅力をディープに味わえる映像と書籍をご紹介しよう。

*島を味わうBook*

『奥東京人に会いに行く』大石始著/晶文社刊

何年も何百回もくり返し叫ばれてきた「東京2020」の、「2020」がやってきた。都心は早くも浮き足立った空気だが、都心から遠く離れたここ新島にオリンピックの影はかけらも見えない。強風吹きすさび、荒波に行く手を拒まれる、新島の冬。海から来る魔物を恐れて、誰ひとり外出することを禁じられる日がある、新島の冬。それもまた、ひとつの東京の姿だ。

東京はたぶん私たちが知っている以上に、広くて深い。では東京の「奥」にはいったい何があり、どんな文化が息づいているのか。この本は、世界の祭りと民俗芸能を追いかけるライター・大石始さんが、東京の最奥で生きる人々を通して東京の新しい一面を掘り起こそうとした渾身の体験ルポだ。

本著では山、川、海、島という4つのテーマで東京の辺縁部を取材。そのうち「東京の島」で著者が旅先に選んだのが、新島と青ヶ島だ。新島の回では、伊豆諸島で明治初期までつづいていた流刑の歴史を紐解きながら、毎年1月24日に今でも行われる「カンナンボーシ」の風習、お経に独特の節を加えて合唱する「節題目」、宴会などで歌い踊った「島節」、先日12年ぶりに復活した「獅子木遣」など、これでもかというほど新島のディープな情報が紹介されている。

特に注目なのが、ヤカミ衆に関するルポルタージュだ。ヤカミ衆とは神社で唄を捧げることで神と交信する、特別な女性集団のこと。新島でつい最近まで実在していたが、その全貌を知る人はほとんどいないという謎に満ちた存在だ。それだけに、本村で最後のヤカミ衆といわれる宮川蝶子さんのインタビューを読んで、ただただ驚いた。新島の明るい海のすぐそばで、こんなひそやかな営みが連綿と行われていたのかと思うと、島の見方がガラリと変わってしまうんじゃないだろうか。

つづいて紹介されている青ヶ島も、興味深い内容だ。「日本一小さい村」として全国的に有名な青ヶ島は、伊豆諸島の中でも特に自然環境の過酷さで知られる。かつて火山の大噴火によって全島避難を強いられた青ヶ島の人々が、約50年もの歳月をかけて成し遂げた島への帰還。青ヶ島の暮らしに深く根付いた「還住(かんじゅう)」の精神と、そこから生まれた芸能の真髄に迫るルポをぜひ本著で読んでほしい。

*島を味わうMovie*

映像作家・中野裕之が魅せる「波に愛された島」新島

TOKYO PEACE TREASURE ISLANDS – NIIJIMA

Mr.ChildrenやDreams Come true、GLAYをはじめとする国内外アーティストのミュージックビデオを数多く手がけ、音楽業界のカリスマとして知られる映像作家・映画監督の中野裕之。スタイリッシュな演出で知られる一方で、ハワイのビッグウェーブをとらえたサーフィンドキュメンタリー『Splash Dance』や、日本の絶景をカメラにおさめた『ピース・ニッポン』など、自然をテーマにした映像作品も多い。

近年はライフワークとして日本の自然美を撮り続けている彼が、いま取り組んでいるのが伊豆諸島・小笠原諸島の撮影だ。タイトルは「東京”真”宝島」。東京の南に浮かぶ11の有人島それぞれの「真の美しさ」を約6分間の映像作品にまとめたシリーズに、このたび新島と式根島が加わった。

新島は「海の力を感じる島」をテーマに、約7㎞つづく羽伏浦から白ママ断崖へのビーチライン、石山から望む間々下海岸、沖から迫る淡井浦と、新島の各サーフスポットに打ち寄せる波をつぶさに撮影。くっきりと弧を描くチューブ、複雑に交錯する波、繊細なレースのような波紋……、新島の地形と風が生み出す豊かな波の表情に目を奪われる。

撮影にあたっては、新島でドローンによる空撮やストック映像を手がけるCREAMの大沼和也さんが撮影チームに参加。長年サーフィン映像を手がけてきた監督と、島の地形にくわしい地元クリエイターとのタッグが生んだ、新島のドラマチックな景観を味わえる1本だ。

 

「小さく、かわいく、大胆な」式根島

TOKYO PEACE TREASURE ISLANDS – SHIKINEJIMA

同じ新島村に属する隣の島、式根島の映像は、おそらく島を旅して味わう景観とは大きく違っているはずだ。伊豆諸島でいちばん小さな島、式根島は自転車で回れるほどのコンパクトさで知られる。こんもりと茂る緑と日本らしい松林、その間を猫がのんびりと歩く。ほっこりする島の景色が、空から見ると一変する。

式根島の湾は多くが複雑なリアス式海岸で、海岸のあちこちに切り立った断崖がそびえる。中野監督は、空撮でその起伏に富んだ海岸線をつぶさに撮影。地上の安らかさとはまったく違う、アグレッシブな地形をあますところなく映像におさめた。複雑にうねる断崖の間に現れる、泊や石白川、釜の下などの美しいビーチとエメラルドグリーンの海。風光明媚な式根島は、やはりどこから眺めても味わい深い。

なお、先に紹介した『奥東京人に会いに行く』でも紹介された、青ヶ島の還住スピリッツから生まれた郷土芸能「還住太鼓」は、青ヶ島のオープニングに登場するので、そちらもぜひ。

文:秋枝ソーデー由美

 

関連リンク

映像作家・映画監督、中野裕之が撮る11島の11作品。それは未来に残したい日本の記録。[東京”真”宝島/東京都]

CREAM(ドローン撮影、ボードレンタル、素泊り宿、キャンプレンタルなど)

青ヶ島還住太鼓ウェブサイト

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