新島高校和太鼓部 1年生座談会
2019年12月22日 更新
初めての大舞台を経験した感想は?
「少人数でもパワフル」を武器に、快進撃を続ける新島高校和太鼓部。今年は1年生8名が入部し、2年生2名、3年生1名の11名で都大会にのぞんだ。部員の大半を新入生が占めるという珍しいチームだが、初めての大舞台を経験した今、どんな気持ちなんだろう? 1年生5名に集まってもらい、和太鼓について、学校生活について、たっぷり語ってもらった。
座談会に参加してくれたのは、新島高校1年生の山崎琢己くん(以下ヤマタク)、槙野貫太くん(以下カンタ)、宮川陽莉さん(以下ヒマリ)、前田加桜さん(以下カオ)、岡田愛華さん(以下アイカ)の5名。都大会では琢己くんが組太鼓(セット)を、他の4名は長胴太鼓の横打ちに取り組んだ。
――まずは都大会に初めて出た感想を、1人ずつ教えてください。
カンタ「今の自分たちの現状、自分たちの位置と、自分たちより力が上の学校との差を知ることができたと思います。一番シンプルに感じたのは、上の学校は演奏のときに胸をはって自分たちの曲を叩けているなということ。それが雰囲気からわかるというか、叩く前から堂々としているのが伝わってきました。ただ、僕自身はすごく緊張したけれど、出せる力は全部出し切れたなと思います」
ヤマタク「やっぱりみんな全然大会に慣れていないな、と感じました。新島で叩ける一番大きな会場は、9月に行われる島民まつりの屋外ステージ。しかも今年はまつりが中止になったので、大会前に人前で叩いたのは2回だけだったんです。そんな状態で、他の学校の演奏を見ながら最終ブロックまで出番を待つという…。でも今回経験したことで、舞台の感覚は少しつかめたかなとは思います」
ヒマリ「私が一番大きかったのは、悔しいっていう気持ち。全部出し切った気はしたんですけど、あとで動画を見ると、ああ、まだいけたな!と思った。強い学校はやっぱり金賞を獲れる動きをしているなーって思って。だから受賞結果はすごく納得できたし、ふだんの練習から違うのかもしれないなと思ったりしました。自信を持って全てを出してきているのがわかったので、一人のお客さんとして、見ていてグッとぐっとくるものがあって。自分たちは、そういうところがまだ出せてないのかなって思いました」
カオ「会場に入ってみて最初に思ったのは、広いな! ってこと。ここで叩くのか、と思ったら緊張がとてつもなくて、最後の方まで緊張していました。でも自分の番になったら、めっちゃ楽しくて。もう少し早く緊張が解けていたらな、とそこがちょっと心残りです」
アイカ「人前で発表するのが3回目であんな広い会場だったので、リハーサルから緊張しすぎて吐きそうでした。本番もいろんな高校の迫力とか伝わってきてすごいなと思ったんですが、いざ舞台に立ってみるとすごく楽しくて、あっという間に終わってしまいました。私は隣の式根島に住んでいるので、船の関係もあってあまり練習できなくて…。これからはもう少し練習に力を入れていきたいなと思いました」
――新島高校にはいろんな部活があると思うけど、みんなが和太鼓部を選んだ理由はなんですか? 中学校までに太鼓をやっていた?
カオ「以前から風神子供太鼓というチームで太鼓をやっていた人が多いんですが、私は中学校でバレーボール部に入っていたので、最初はバレー部と太鼓部どっちにしようか悩んでいたんです。でも去年、新高の文化祭で先輩の演奏を見て、太鼓部に入ろう!と決めました」
カンタ「僕は太鼓部に入るつもりはなかったんだけど、兄貴がずっと太鼓をやっていて、『自分たちが獲れなかった金賞をお前らの代で獲ってほしい』と言われて。その期待に応えたいという気持ちもあったし、どうせやるなら兄貴を超えたいなと思ったので入りました」
ヤマタク「僕の場合、小学校の子供太鼓は単純に面白かったから入っていたんですけど、中学校に入ってからは日頃のストレス発散のためにやってました。その勢いで高校も太鼓部に」
ヒマリ「そんなにストレスあったんだ(笑)」
ヤマタク「今は楽しければなんでもいいんで」
カオ「ふーん。初耳だわ!」
アイカ「私は式根島の先輩が太鼓をやっていて、3年生の先輩と一緒に叩きたくて太鼓部に入ろうと思ったんです。でも一緒にやるうちにだんだん先輩の背中の大きさを感じるようになって、曲も全然覚えられないし、船の関係で30分しか練習に参加できなくて、もう嫌で辞めたくて死にそうな日々を送っていたんですけど」
ヒマリ「重い(笑)」
アイカ「でも今は部活が楽しくて続けようと思っています。ギリギリまで練習して、あとは動画を見ながら家で練習して、少しでもみんなに追いつきたいと思っています」
ヒマリ「私は、ただただ太鼓が好きで入った感じです。文化祭を見て入ろうと思ったし、楽しいなって思えるのが太鼓だったので、そのまま入部しました」
ーー今回の大会曲もそうですが、太鼓部といえば横打ちじゃないですか。すごくハードな曲だと思うんですが、普段はどんな風に練習しているんですか?
カンタ「普段は基礎練習をして、曲の部分練習をして、最後に通して練習しています」
ヤマタク「ただ週2回の平日練習では式根島の人が30分しか練習できないので、すぐに曲練習に入ってますね」
カンタ「そのぶん時間を長く取れる土曜の練習では筋トレをしっかりやります。腕立てとか、体幹トレーニングとか」
――女子で横打ちはキツくない?
アイカ「キツイです(笑)。横打ちで腰を低く落とす練習として先輩たちが考えたらしいんですけど、壁に背中をはりつけて、姿勢を下げていくというトレーニングをやるんです。これがもう、最初は足が全然下がらなくて」
カンタ「あの練習ってやる必要あるんですかね。理不尽な練習です。まあ、横打ちがそもそも理不尽なスタイルなんだけど(笑)。でも太鼓部に入ったら横打ちをやるもんだと思っているので」
さとコーチ(突然乱入)「基本的に全員横打ちはやりますね。特に新島高校の評価が高いのは、鏡になって右と左で1つの太鼓を横打ちするスタイル。右利きの子が左から打つのは本当に難しいんですよ。新高の子は左利きがいないので、あえて左から打つトレーニングを積んでいるんです」
カンタ「でも、そこが大会では審査員から厳しく言われたんですよね。難しいことに取り組むのであれば、もっとそろえるようにしなさいと。利き手じゃないのがわかりやすかった」
ヤマタク「セットも難しいことに挑戦したら、簡単なリズムを合わせるところからやれと、厳しいダメ出しがきました(笑)」
――大会審査員のコメントについては、納得いきましたか?
カンタ「はい。図星しかなかったです。どの審査員にも共通して言われたのが、テンポキープができていなかったということ」
カオ「あとはペース配分と体力。最後は体力がなくなっているのが見えた、と言われました」
ヤマタク「もうすぐ終わる! って顔してたよね最後って言われたり。バレましたね」
――今年は横打ちを取り入れた学校が他にもありましたね。
カンタ「やっぱ新高がカッコよかったから真似したんですよ! こうなったら横打ちの学校で合宿やりたいですよ」
ヤマタク「みんなで新島に来ればいいんですよ。横打ちの本場だ、ここは!」
カンタ「三宅だから(笑)」
ヤマタク「三宅太鼓って有名だけど、三宅島や八丈島の学校はなぜか都大会には出場してないんですよね。伊豆諸島では伊豆大島と新島だけ」
――都大会を見ましたが、課題曲がなく自由曲だけで勝負するという方法で、正直驚きました。打ち方も流派も人数も曲もまったく違う状態で優劣を審査されることについては、どう思いますか?
カンタ「出るからには割り切らないと、と思っています。でも、本当に学校によってバラバラでしたね」
ヒマリ「叩き方を合わせるとか、課題曲は決めてほしいなとは思いますけど。平打ちと横打ちだと全然打ち方が違うし、人数も多いところと少ないところで全然違うわけだから」
――それでも、大会には出たい?
カンタ「はい。単純に大きな舞台で発表するのは楽しいし、勝負は面白い。島にいると他の学校がどうなのかわからないし」
ヤマタク「自分たちのことしかわからなくて、他と比べる引き出しがない」
カンタ「今回優秀賞を獲って全国大会に行った南多摩中等教育学校を見て、燃えるものがありましたね。八丈太鼓をやっていて、同じ横打ちだったし」
全員「あとは、金賞を獲った翔陽高校!」
ヒマリ「翔陽とは夏に新島で一緒に合宿をしたんですが、本番のキレがすごかった! 金賞は先を越されてしまったので、がんばりたいですね」
さとコーチ「でも新島高校は個人賞5連覇だよ。大会初の個人賞3名出た年もあったし」
カオ「じゃあ4人個人賞を獲れば超えられる(笑)。あとは、とにかく金賞を獲りたいな」
アイカ「そのためには、体力が必要だね」
ヒマリ「チームワークも」
カンタ「表現力も」
ヤマタク「あとは心の持っていきかたも大事。最初から金賞を獲ろう! って思うと絶対獲れないと思う。今回はそれでガッチガチになりすぎちゃったのもあると思います」
アイカ「出番まで長くて、本当に死にそうだった…。初めての舞台であの大きさで、人もいっぱいいるし、死ぬかと思った」
カンタ「俺、昼食えなかった」
ヤマタク「俺、食った。ファミチキ食った。おいしかった」
ヒマリ「優雅だな(笑)」
ヤマタク「でも会場が広すぎて、打った音がむこうに行ったきり戻ってこなかったな」
アイカ「近くにいるのに、隣の人の音が全然聞こえなかったね」
さとコーチ「今回は1年生にとっては初めてのホール演奏だったので、場数を踏むことで感覚もつかめてくるんじゃないかと思いますよ」
――大会も終わり、太鼓部も3年生が引退して新しい体制になると思います。今後こんなことをしてみたい、こんな太鼓を打ってみたいという目標はありますか?
ヤマタク「桶をやってみたいです。桶って、叩いた後に一瞬遅れてバーンと音がはじける瞬間があって、あれが好きです」
カンタ「自分はやっぱり『自分を見ろ!』って感じで、前に出て目立つところで打つのが一番燃えるので、そういう演奏をしたいです」
ヒマリ「私は締太鼓以外なら、なんでもやりたいです。細かい動きは好きじゃないので」
カオ「子供太鼓をやっているときは、ずっと締太鼓だったので、中太鼓(長胴太鼓)とかまだ経験がないのでやりたいです。あと担ぎ桶は苦手ですね」
アイカ「私は横打ちがいいです。締太鼓はやりたくないです。難しくて、無理だなって思いました。締は速すぎるよ!」
ヤマタク「締は人気ないな! やっていれば覚えられるよ?」
カンタ「あとは部費の問題とかあると思うんですが、いろんな大会や太鼓祭りとかに出場したいです。年に1回、この中央大会だけというのはもったいない気もするし、できるならいろいろな機会に参加したいです」
ヒマリ「遠征したい! 4島めぐりとか、島をめぐりたいな。今は他の島と交流がないので、いろんな島に行って太鼓交流できたらいいですね」
ヤマタク「あとは新曲をやりたいですね」
カオ「クリスマスコンサートやりましょう! 和太鼓で(笑)」
ヤマタク「大太鼓のパートも作りましょうよ! 大太鼓を買って!」
ヒマリ「募金箱を置いて、投げ銭ストリートライブやってお金ためよう」
カンタ「島じゃ誰も通らないよ!」
カオ「じゃあ港で叩こう。観光客の人に向けて」
アイカ「新しいさるびあ丸のテーマ曲を作って、東海汽船に提供しましょうよ」
ヤマタク「大太鼓っていくらするんですか? 安くて200万円? じゃあ太鼓の皮は? あっ、じゃあ皮のために牛を育てる? 黒毛和牛で黒い太鼓とかカッコよくない?」
全員「来年の目標は牛を飼うところから、ということで(笑)」
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