宮川英都サブコーチ インタビュー
2019年12月28日 更新
和太鼓部の指導にあたりながら、自らもプレイヤーとして活動する英都コーチの感想とは?
新島高校和太鼓部のOBとして後輩の指導にあたりながら、自らもプレイヤーとして活動する宮川英都さん。新島の和太鼓文化を担う若きコーチに、新高太鼓部が出場した大会の感想や、新島の太鼓環境についてうかがいました。
太鼓部には横打ちで上をめざしてほしい!
――まずは、都大会の率直な感想を聞かせてください。
舞台袖で演奏を見たんですが、特に大きなミスもなく最後まで打ち切れたので、それは良かったと思います。舞台袖からだと細かいところまでよく見えるので、全員が全力でやっているのがすごく伝わってきましたね。銀賞という結果についても納得です。新高で初めて銅賞から銀賞にランクアップできたのは、自分が現役だったとき。それ以来ずっと銀賞をキープできているのは卒業生としてすごく嬉しいことです。
「金賞を獲りたい」と生徒たちは言っていましたが、大会を経験した身としては「それならもっとがんばらないと届かないよ」とは思っていました。演奏自体は悪くない。でも、足りないものがあるのは確かで。それは大会に出た生徒たちが自分で感じる部分なので、大会を経験して見えたものは多いんじゃないでしょうか。
それにしても今回初めて自分がプレイしない立場で大会に参加しましたが、生徒たちの緊張を肌で感じて、すごく新鮮でしたね。自分が出たときは緊張で記憶がほとんどなくて、みんなの緊張を味わう余裕もなかったんです。ですから今回生徒たちを見ていて、こんなに個性って違うんだなと思いました。落ちついている子もいれば、「ヤベーヤベー」と言いながらうろついている子もいて、こちらまでドキドキさせられました(笑)。
他校に関しては、特別賞を受賞した府中東高校が印象に残りました。少人数なのに技術がすばらしくて、結果もしっかり出しているのは気になるところです。
――新高の代名詞ともなっている「横打ち」ですが、今回は他の学校でも取り入れられていました。それもあってか、新高の横打ちに対する評価が厳しかったのでは、という声もありましたが。
打ち方を選ぶのはそれぞれの高校なので、「新高は横打ちで行く」と決めているのであれば、横打ちを極めてほしいなと思います。それがイヤなら、他の打ち方を選べばいい。でも、じゃあ他の打ち方をしたら金賞に上がれるの? とも思う。横打ちをやることは本当にすごいことだと思うから、みんなには横打ちで上を目指してほしいと僕は思いますけどね。
大会の後に審査員の方とお話しできる時間があったんですが、そのときに言われたのは「横打ちのフォームがそろっていない」ということ。他の高校は打つときのフォームをそろえてきますが、横打ちの場合は体全体を使って打つので、体格も手足の長さも違う人たちがフォームをそろえるのってすごく難しいんですよ。
それが「そろっていなくてバラバラに見える」と、ある審査員の方に言われて。バラバラならもっとバラバラにしてもいいし、そろえるならちゃんと統一しろと。中途半端はダメだということなんでしょう。あとは、やはり体力不足を指摘されました。あの体勢で8分間打ち続けて、最初と最後で音や振りにブレが大きいと。なるほどな、とは思うんですが、でも最初から全力!というのがあの子たちらしいなーとは思います(笑)。
東京に出て、島の太鼓環境の良さに気づいた
――英都さん自身が太鼓部に入った理由は何だったんですか?
じつは僕、珍しく編入組で。小学校までは子供太鼓を習っていたんですが、中学でやめてしまって、高校でも最初はバスケ部に入っていたんです。それが高2になる直前に同級生に勧誘されて、太鼓部に入ることになったんですね。
そのときに横打ちを始めたんですが、他のメンバーになかなか追いつけなくて、2年生の1年間はかなりしんどかったです。曲は覚えられるんだけど、なかなかみんなと同じようには打てなくて……。悔しくて、とにかく自主練めちゃくちゃしてましたね。
――現在は新島で働きながら、風神組のメンバーとしてプレイしたり、太鼓部や子供太鼓で指導もされています。今でも島の太鼓に関わっているのは、太鼓部での経験が大きかったからでしょうか?
そうですね。卒業しても太鼓をやりたいと思っていたんですが、仕事で島を出ることになったら太鼓を打つ機会がなくなってしまって。東京にいると、和太鼓を打てる機会って全くといってないんですよね。
だから新島に帰った時に部活に顔出すくらいだったんですが、1年ほど前に島で就職することになったとき、太鼓部コーチのさとさんに「また太鼓やればいいじゃん!」と言われて。そうか、新島には一般チームがあったじゃないか!と思って、すぐに社会人グループの風神組に加わりました。
子供たちの指導は、勉強としてやらせてもらっています。子供たちとふれあうのは楽しいけれど、指導自体はすごく難しい。「こうするんだよ!」と言っても全然伝わらないし、もどかしいほうが強いかなあ。プレイするのとはまったく違う技術が必要で、生徒たちにどう伝えれば響くのか、いまだに手探りしています。
指導する立場になって、改めて太鼓部の先輩はどんな風に指導していたかなと思い出そうとしたんですが……太鼓部って代によってカラーも練習方法も全然違うんですよね。そこは新高の面白いところなので、毎年考えながらやっていくしかないのかなって思っています。いま郵便局で働いているので、太鼓の梱包を手早くできることで少しは太鼓部の役に立てているかな、と思っているんですが。
プレイヤーとしては、まだまだ上に行きたいですね! 自分のレベルをもっともっと上げたい。幸いにも島の中で一緒にプレイしてくれる仲間が増えてきたので、みんなで島の太鼓を盛り上げていけたらいいなと思っています。
<プロフィール写真 撮影:岡桃子>
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